家族で話し合う力を育てる:「家庭会議」のすすめ
〜子どもを“当事者”にする育て方〜
「どうして何度言っても分からないの?」
「もっとちゃんと考えて行動してほしい……」
そんなふうに、親が子どもの行動にモヤモヤを感じるとき、実は“伝え方”ではなく“向き合い方”を変えることで、関係性がぐっとラクになるかもしれません。
アメリカの教育心理学者・ジェーン・ネルセンが提唱する『Positive Discipline』では、「家庭会議(Family Meeting)」というシンプルで効果的な方法が紹介されています。これは、親が子どもに指示や説教をするのではなく、子どもを家庭の一員として信頼し、問題の解決に参加させるという考え方です。
家庭会議って何をするの?
家庭会議とは、定期的に家族全員で集まり、話し合う時間を持つことです。話し合う内容は自由ですが、以下のようなテーマが挙げられます:
話し合いテーマ | 目的・効果 |
1. 家庭内の困りごと | たとえば「朝の支度に時間がかかる」「兄妹げんかが多い」など。子ども自身が原因や対策を考える練習になります。 |
2. 感謝の気持ちを伝える | 「お手伝いありがとう」「今日は優しかったね」など、小さな“ありがとう”が家族の空気を温かくします。 |
3. ルールや役割の見直し | 「テレビはいつまで?」「誰がゴミを出す?」など、家族でルールを決めれば子どもの納得感も高まります。 |
4. 楽しい予定の相談 | 「週末はどこへ行こう?」「今月の誕生日会は?」など、未来のワクワクをみんなで描く時間です。 |
子どもに“聞かせる”から“話させる”へ
大切なのは、親が主導するのではなく、子どもが自分の考えを口にできる場にすることです。
Positive Disciplineでは、以下のような姿勢を推奨しています:
- 「どうしたらいいと思う?」と問いかける
- 「私はこう思っているけど、みんなはどうかな?」と意見を求める
- 話し合いの中で誰かを責めない・評価しない
子どもは、自分の意見が真剣に扱われたと感じたとき、“受け身”から“当事者”へと変わっていきます。これは単に問題解決の訓練ではなく、将来に役立つ対話力・自己表現力・他者への共感力の土台になります。
会議のやり方:ちょっとした工夫でうまくいく
最初は週1回、日曜日の夜など家族全員がそろいやすい時間に15分程度でOK。以下のような流れがおすすめです:
- 「ありがとう」タイム:家族それぞれが1人以上に感謝を伝える
- 議題タイム:今週困ったこと・解決したいことを話す
- みんなでアイデア出し:「どうすればうまくいく?」を全員で考える
- 楽しいお知らせ:今後の予定や楽しみなことを共有
- おやつ or スタンプカード:最後はちょっとしたごほうびで終了
実践のコツ
- 議題は1〜2個まで:たくさん詰め込まない
- 子どもが言い出したアイデアを尊重する:「それは無理」とは言わず、可能性を広げてあげる
- 短く楽しく終える:継続の鍵は「またやりたい」と思える雰囲気づくり
家庭会議は、“親の手を放す練習”でもある
家庭会議は、親にとっても“決めてあげる”役から“信じて任せる”役へのシフトを促します。「子どもの話に耳を傾け、信じて任せる」。これは簡単なようで、実はとても勇気のいることです。
でも、一度この習慣が家庭に根づくと、子どもはびっくりするくらい主体的に動き始めます。そして、「子どもが自分で解決できた」経験は、人生を支える自信と力強さになります。
まずは今日、「今週ちょっと話し合ってみようか?」と家族に声をかけてみませんか?きっと、思いがけない子どもの一面に出会えるはずです。
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