「また怒鳴ってしまった……」
夜、子どもが寝た後にふと襲ってくる罪悪感。言いすぎたなと思っても、次の日にはまた同じパターンで怒ってしまう――そんな経験、ありませんか?
子育てにおいて、感情的になるのは誰にでもあること。でも、怒りに任せた言葉は、伝えたい本当の気持ちをかえって届きにくくしてしまいます。
今回は、怒らずに、でもしっかり気持ちを伝えるための「非暴力コミュニケーション(NVC)」という方法をご紹介します。
ポイントはたった4つのステップ。これを知るだけで、親子の会話がぐっと穏やかに、そして本音に近づきます。
ステップ1:「観察」する — 評価を手放して事実を見よう

最初のステップは、“評価せずに観察する”ことです。
たとえば、

あなたってほんとにだらしない!
という言い方は、子どもにとっては「人格への攻撃」に感じられ、防衛的になります。
でも、「ソファに制服が脱ぎっぱなしになっているよ」と伝えるだけなら、事実だけにフォーカスでき、相手も受け取りやすくなります。
✔ NG:「また片づけてないじゃない!」
✔ OK:「床に靴下が置きっぱなしになってるね」
評価や決めつけの言葉をはさまず、その瞬間に見えている事実だけを述べる。それだけで、会話の空気が柔らかくなります。
ステップ2:「感情」を素直に伝える
事実を伝えたら、次は自分の感情を表現すること。

つい「ちゃんとしてよ!」と責め口調になってしまうとき、その裏には

疲れている、わかってほしい・・・
といった自分の気持ちがあるはずです。
✔ NG:「もう!なんで何回言ってもできないの?」
✔ OK:「私は疲れていて、ちょっとイライラしてるの」
ここで大切なのは、「あなたが悪い」ではなく、「私はこう感じている」と主語を自分にすること(Iメッセージ)。
自分の感情を正直に言葉にすることで、子どもは責められているとは感じず、親の気持ちに耳を傾けやすくなります。
ステップ3:「ニーズ」を明らかにする — 感情の奥にある望み
人は、満たされないニーズ(=必要なこと、大切にしたいこと)があるときに、感情が動きます。

たとえば、「イライラする」という感情の奥には、

安心して過ごしたい、協力してほしい・・・
という願いがあるかもしれません。
✔ NG:「どうしてわかってくれないの?」
✔ OK:「私は、部屋が整っているとリラックスできるの」
自分の気持ちを表現するだけでなく、その背景にある「大切にしたいもの」を伝えること。
それが、ただの感情の発散ではなく、関係性を深める会話に変える鍵になります。
ステップ4:「リクエスト」する — 命令でなく、提案として伝える
最後のステップは、「どうしてほしいか」を具体的に、そして提案の形で伝えること。

✔ NG:「今すぐ片づけなさい!」
✔ OK:「今できそう?それともご飯のあとにやる?」
命令や強制ではなく、選択肢を提示することで、子どもは“自分で選ぶ”という自主性を持てます。
ここでのポイントは、「要求」ではなく「お願い」にすること。
断られても話し合える余地を残すことで、親も子も無理なく歩み寄ることができます。
4ステップまとめ:親子で「つながる」話し方
ステップ | 内容 | 例文 |
---|---|---|
観察 | 評価や判断をせず、事実だけを伝える | 「床に靴下があるね」 |
感情 | 自分の本当の気持ちを伝える | 「私はちょっと疲れてるの」 |
ニーズ | その気持ちの背景にある願いを伝える | 「私は落ち着いて過ごしたいの」 |
リクエスト | 命令でなく、具体的に提案する | 「今片づけられそう?それとも後で?」 |
おわりに
この4ステップを実践しても、最初はうまくいかないかもしれません。つい怒りが先に出てしまう日もあるでしょう。
でも、大丈夫です。親だって人間。完璧じゃなくていいのです。
大切なのは、子どもと「敵」ではなく「チーム」として向き合うこと。
言葉の使い方を変えるだけで、親子の関係性は、驚くほど変わります。
次にイライラしそうなとき、「観察→感情→ニーズ→リクエスト」の4つのステップを、そっと思い出してみてください。
あなたの言葉は、ちゃんと子どもに届きます。
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