「わたしには意味がある」
子どもに「あなたって何が得意なの?」「自分の良いところって何?」と聞いてみたとき、
答えに詰まったり、「別に……ないし」とつぶやいたりすることはありませんか?
そんなとき、ただの照れや思春期の反抗と片づけずに考えてみてほしいのが、
子どもが自分の「意義感(Significance)」を見失っているかもしれないということ。
意義感ってなに?
意義感とは、「自分には価値がある」「自分は誰かの役に立っている」と感じる感覚です。
『正面管教』では、帰属感(Belonging)と意義感(Significance)の両方が育つことで、人は健全に生きようとする動機が生まれるとされています。
たとえば、こんな言葉がけは意義感を支える力になります:
- 「あなたがいてくれて助かった」
- 「それはあなたにしかできないことだね」
- 「あなたの考え方、いいと思う」
こうした声かけによって、子どもは「自分がこの世界に“必要とされている”」と感じます。
その実感が、やがて自己肯定感、行動力、責任感へと発展していきます。
意義感が失われるとき
逆に、こんな言葉がけや態度は、子どもの意義感を削ってしまいます。
- 「それくらい当然でしょ」
- 「あなたがやると時間がかかるからやらなくていい」
- 「お兄ちゃんの方がしっかりしてる」
これらの言葉の裏には、「あなたである必要はない」という無意識のメッセージが隠れています。
意義感を失った子どもは、次第にこう感じるようになります:
- 「どうせ自分なんて……」
- 「役に立たないなら意味がない」
- 「注目されるには悪目立ちするしかない」
こうした心理は、無気力や攻撃性、過剰な承認欲求となって現れやすくなります。
意義感を育てる具体的な関わり
実践 | 効果 |
1. 役割を明確に与える | 例えば「水やり係」「朝のテーブル拭き係」など。家庭やクラスで“自分が担うべき何か”があることで、子どもは自分の居場所と価値を感じます。 |
2. 小さな行動にも「感謝」を伝える | 「ありがとう」と言われる経験は、自分の存在が他者に影響を与えたという実感に直結します。 |
3. 意見を尋ねる | 「どう思う?」「どうしたい?」と、選択権や発言権を与えることは、「あなたには考える価値がある」という信頼のメッセージになります。 |
4. 他者への貢献体験を増やす | 小さなボランティアや、弟妹のサポートなど、自分が誰かの役に立てたという体験を持たせることは大きな自信に。 |
大切なのは「存在そのものの意義」を伝えること
意義感を支えるのは、何かが“できたとき”の評価ではなく、存在そのものへの承認です。
- 「結果はどうあれ、あなたが頑張ったことがすごい」
- 「あなたの存在が、この家族をあたたかくしてくれてるよ」
こうした言葉を繰り返し聞くうちに、子どもはこう感じるようになります:
「ぼくがここにいるだけで、意味があるんだ」
「わたしの存在は、誰かの力になれるんだ」
意義感は、子どもが自分の“人生にYESと言える力”
意義感が育つと、子どもは困難に出会ったときも「自分にはできる意味がある」「この選択には意味がある」と思えるようになります。
それはまさに、非認知能力の核とも言える「動機づけ」「自己効力感」「レジリエンス」そのものです。
まとめ
子どもにとって「何ができるか」よりも前に大事なのは、
「自分は価値ある存在だ」と心から感じられること。
今日、ぜひこう伝えてみてください。
「あなたがいてくれて、本当にうれしい。」
その一言が、子どもの未来を強く、しなやかに支える力になります。
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