「ここにいていいんだ」と思える子に
〜帰属感が育てる、子どもの心の安全基地〜
子どもがわがままを言ったり、反抗的になったとき、「ちゃんとしなさい」「そんな子は知らないよ」と言ってしまったことはありませんか?
けれども、子どもがもっとも求めているのは、“ここにいていい”という安心感。
それこそが、非認知能力の土台となる「帰属感(Belonging)」です。
帰属感とは何か?
帰属感とは、「私はこの家族・集団の一員である」「私はここにいてよい」と無条件に感じられる心の感覚のことです。
『ポジティブ・ディシプリン』では、子どもが健全に自立していくための第一歩として、この“所属”と“意義”の感覚が不可欠だとされています。
たとえば——
- 自分の意見が家族に聞いてもらえる
- 失敗しても見捨てられないと分かっている
- 「いてくれてうれしい」と言葉や態度で伝えられる
このような日常の積み重ねが、子どもの中に「自分はここにいる意味がある」という安心感を育てます。
帰属感が足りないとどうなる?
帰属感が満たされていない子どもは、時に逆の行動をとります。
- すぐに怒る・反抗する
- 「どうせ自分なんて」と卑屈になる
- 必要以上に親の気を引こうとする
- 無気力になる、投げやりな態度をとる
これらの行動は「困った子」ではなく、「帰属感を求めて必死な子」のサインかもしれません。
帰属感を育てるために、親ができること
方法 | 具体的な実践例 |
1. 「ありがとう」を日常に | 何気ないお手伝いにも「助かったよ」と伝える。「いてくれてうれしいね」が魔法の言葉。 |
2. 子どもにも“役割”を与える | 食事の配膳係、ゴミ出し係など。「自分は必要とされている」と感じることで、所属意識が育つ。 |
3. 意見を求める | 家族会議で「どうしたらいいと思う?」と尋ねる。「子どもなのに」ではなく、「子どもだからこそ」聞く。 |
4. 比較しない・評価しない | 「お兄ちゃんはできたのに」はNG。できたことではなく、存在そのものを認める。 |
「何ができるか」ではなく「ここにいていい」から始める
子どもは、親の態度の中に「条件つきの愛」を敏感に感じ取ります**。
- 「ちゃんとできたらほめる」
- 「わがままを言うと嫌われる」
こうした環境では、子どもは“いい子”を演じるか、あきらめて“悪い子”に転じるか、どちらかになってしまいます。
でも、「あなたはあなたでいい」「できてもできなくても大好きだよ」と伝えることで、自己肯定感と帰属感が同時に育ちます。
帰属感が育つと、非認知能力が花ひらく
「帰属感」は、以下のような非認知スキルと密接につながっています:
- 自信:失敗しても見捨てられないから、挑戦できる
- 自制心:叱られるからやめるのではなく、“大切にされているからこそ”考える
- 共感力:自分が大切にされた経験があるから、他人を思いやれる
つまり、帰属感が育った子は、心が安定し、自ら考え、自ら行動できる力を自然に身につけていくのです。
まとめ:帰属感とは「心の居場所」
親ができるもっとも大切なことは、
「あなたはこの家族の一員で、大切な存在だよ」と、態度で伝えることです。
今日、子どもにこんなふうに声をかけてみませんか?
「いてくれて、ありがとう。」
それは、どんな教育的助言よりも、子どもの心に残る言葉になるかもしれません。
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